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課題集 マキ3 の山

○自由な題名 / 池新
○マスコミ / 池新
★清書(せいしょ) / 池新

○近頃、いろいろな分野で / 池新
 近頃、いろいろな分野で「二世」が目立つ。スポーツ界をはじめ、芸能界や政界にまで、二世の活躍する場は及んでいる。人間のさまざまな能力について、「遺伝」と「環境」のどちらが影響を与えるのかというテーマは、古くから議論されてきたものである。二世の活躍などを見ると、人間の容姿や才能、性格などを決めるのに、やはり遺伝のほうが育った環境より重要と言っていいのだろうか。
 いや、必ずしもそうとはいえない。ここでは、生まれてすぐに人間の手を離れて育った「野生児」の例を取り上げてみよう。一九二〇年にインドの森で見つかり、カマラ(八歳半)とアマラ(一歳半)と後に名付けられた二人の少女は、オオカミに育てられた子供として知られている。発見当時、二人ともオオカミの住んでいる穴から出てきて、オオカミと同じように行動した。
 もしくは、四足歩行をおこない、舌を垂らしたままで何度もくり返し吠えるのである。また、光を怖がる一方で、夜は活動的になり、毎日四時間ほどしか眠らなかった。飲み物はペチャペチャなめ、食べ物は肉食に偏っていて、うずくまった姿勢で食べた。行動ばかりか、体の形にまで野生生活の影響が現れていた。手のひらや肘、膝、足の裏の皮膚が、厚く硬いかたまりになっていたのである。
 二人は見つかってから孤児院で育てられたが、二足歩行するまでに六年もかかるなど、ゆっくりとしか個性は現れなかった。
 この野生児の例をみると、容姿には遺伝が深く関わっているが、行動や性格の発達に関しては、生後まもなくからの、子供の置かれた環境がきわめて重要なことがわかる。

(大石正道『遺伝子組み換えとクローン』)