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課題集 カキ3 の山

★自由(じゆう)な題名(だいめい) / 池新
○私の夜(よる)、カタツムリを見つけたこと / 池新
★がんばったこと、水たまり / 池新

○犬の嗅覚 / 池新
 犬を散歩に連れて行くと、あたりの匂いをよくかぎまわります。匂いをかぎ分ける力を嗅覚と言いますが、犬は人の百万倍もの嗅覚を持っていると言われています。また、犬は音にも敏感で、人に聞こえない音を聞く力も持っています。しかし、目はあまり良くなくて、遠くがよく見えず、色もあまり見えません。ただし、夜の暗いところでは、人よりもよく物が見えるようです。犬は、人間ほど目がよくない代わりに、匂いや音でまわりの様子を感じ取っています。
 犬の鼻には、匂いを感じる細胞が、およそ二億個もあります。これに対して、私たち人間は、およそ五百万個ですから、犬には人の四十倍も多くの匂いを感じる細胞があることになります。
 犬が特に得意なのは、「酸」というものの匂いです。たとえば、台所にある「お酢」の匂いもその一つです。この「酸」の匂いなら、犬は人の一億倍ものかすかな匂いまで、かぎ分けることができます。このすぐれた鼻を生かして、犬は私たちの社会で役に立つ仕事をしてくれています。犯人の匂いをたどる警察犬、地震などで行方不明になった人を探す災害救助犬、外国からの荷物を検査する麻薬探知犬などです。
 人間を含めた哺乳類の汗や涙には、この「酸」の仲間がふくまれています。警察犬や災害救助犬は、この匂いをたどるように訓練されています。警察犬は、靴の底を通して地面についたかすかな匂いまでたどることができるそうです。
 阪神大震災の際、スイスやフランスからやってきてくれた災害救助犬がたいへん活躍し、多くの人を助けてくれました。この時、日本ではまだ災害救助犬のことがあまり知られていなかったため、海外からのチームが空港で足止めされ、三日たってからようやく現地に着いた、ということも起こりました。この反省から、∵現在では日本でも多くの災害救助犬が育てられるようになっています。
 麻薬探知犬は、空港や港など、外国から旅行者や荷物がたくさん入ってくる場所で活躍しています。麻薬の匂いを覚えていて、隠されている麻薬を探し出すのです。
 最近では、癌探知犬の研究も、進められているそうです。犬が、癌にかかっている患者の吐く息をかぎ分けることができるかもしれない、というのです。
 このように犬の嗅覚はとてもすぐれていますが、それだけでは私たち人間のためになる仕事をさせることはできなかったでしょう。犬がこのように役に立つ仕事をしてくれるのは、彼らがとても遊びきで、人間が好きだったからです。犯人の匂いを追う警察犬も、隠された麻薬を探す麻薬探知犬も、犬たちはたぶんゲームでもしているつもりなのでしょう。早くお目当てのものを見つけて、ほめてもらいたいのです。それは、犬と人間との、お互いのしっかりとした信頼関係があって初めて成り立つ仕事です。こんなに科学が発達した世の中になっても、機械がこの犬たちの仕事を代わりにこなすことはできません。
 そう、犬は、とても「ワンだふる」な、人間のパートナーなのです。

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(τ)