昨日176 今日186 合計153787
課題集 カキ3 の山

★自由(じゆう)な題名(だいめい) / 池新
○かなしかったこと / 池新
○山さいつみ、わたしのせんせい / 池新

○マッチ箱の動物園 / 池新
 ジェリー・ダレルは動物が大好きな男の子でした。ある日、家にお客様が来ました。ジェリーのお兄さんは、お客様のたばこに火をつけてあげようとして、テーブルの上にあったマッチの箱をあけました。次の瞬間、お兄さんもお客様も大声をあげて逃げ出しました。マッチ箱に入っていたのは、マッチではなくて、生きたサソリの親子だったのです。きっとジェリーのしわざだな、とお兄さんはおこりながらも、あきらめました。
 大人になったとき、ジェリーはこう言いました。
「これが私の持った最初の動物園でした。サソリの親子の入ったマッチ箱が。」
 さて、サソリの親子を手始めとして、ジェリーはどんどん動物を集めました。大体は二階の自分の部屋で飼っていたので、そこが次の「ジェリーの動物園」になりました。ジェリーのお父さんは早くに亡くなっていて、家族はお母さんと大きいお兄さんが二人、若いお姉さんが一人いました。みんな、「ジェリーの動物園」の動物たちがふえていくことには、文句を言いましたが、ひとたびジェリーが新しい動物を持って帰ると、みんなもかわいいと喜んで、飼うのを許してしまうのでした。
 大人になるとジェリーは、動物園に送るためのめずらしい動物をアフリカまで行ってつかまえる仕事を始めました。ところが、いざ動物園に送られることになると、ジェリーはがっかりしました。せっかく仲良くなった動物たちと別れなければいけないばかりか、動物園では飼い方もわからず、ひどい生活をさせるようになったところもあったからでした。その上アフリカでは、人間によって動物たちが住むところをなくしたり、ぜいたくをするために殺されたりしてほろんでいっていることを、ジェリーは知りました。∵
 そこで、ジェリーは、自分の動物園を作ることにしました。それは、絶滅しかけた動物を保護し、増やし、それから生まれ故郷に返す動物園でした。さらに、生まれ故郷の人々に、どんなに動物が大切かを教育し、動物たちが住めるように自然をよみがえらせる仕事もする動物園でした。ジェリーはその「夢の動物園」を作るお金を集めるために、今までの経験をおもしろく本に書いて売ったり、いろいろなところで話をして寄付をもらったりしました。
 ついに動物園の計画は実現しました。ジャージー野生動物保護動物園です。世界中からその動物園に協力し、勉強する人たちが集まってきました。動物園の二十五周年記念のとき、ジェリーは動物園で働く人たちから、すばらしいプレゼントをもらって、大声をあげました。それは、銀のマッチ箱に入った、金でできたサソリの親子の人形でした。誰もが、ジェリーの「最初の動物園」のことを知っていたのでした。
 さて、昔、食堂で逃げ出してみんなを驚かせたニシキヘビは、その後どうなったのでしょう。実は、本当に驚いたのはヘビの方で、つかまえられたヘビはおりの中で、「ヘー、ビっくりした。」と言っていたそうです。

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(λ)