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課題集 ヘチマ3 の山

○自由な題名 / 池新
○寒い朝、体がぽかぽか / 池新


★いま日本の若者の多くが / 池新
 いま日本の若者の多くが、受験競争の中で苦しんでいます。そして渦中にいる受験生は、こんな苦しい状況におかれているのは、きっと日本の生徒だけだろうと思ってしまいがちです。しかし、じつはそうではありません。近隣諸国の受験競争の激しさも相当なものなのです。
 おとなりの韓国も事情は同じです。私がソウル市内の高校をはじめて見学したのは一九八〇年代の前半のことでしたが、日本の学校との類似点の多さに目をみはった経験があります。とりわけ、韓国の受験競争のきびしさは、日本に勝るとも劣らないものでした。
   (中 略)
 もう一つの隣国・中国の入学試験もたいへんな狭き門です。中国の大学進学率は日本ほど高くありませんが、入学定員自体が少ないため、競争は激烈です。北京からの留学生・王立軍(ワンリージュン)さんはつぎのように語ります。
 「中国の受験生は本当によく勉強します。ぼくの場合も、高校二年生から本格的に受験勉強をはじめ、三年生では受験一色の生活になりました。家ではもちろん、学校の休み時間にも、寸暇を惜しんで、友だちと教え合ったりしながら勉強しました。入試が終わったとたんにどっと疲れが出てしまい、熱を出して三か月ほど入院してしまいました。精神疲労がピークになっていたんだと思います。」
 さいわい王さんは、北京にある文科系の大学に合格することができました。その後、経済学を学ぶために日本に来て、いまは都内の大学の二年生に在籍しています。
 中国の大学はすべて国立大学で、学生は授業料を免除されています。全員が学生寮で暮らしていますが、寮費や生活費も政府から支給されていました。
 「中国の大学生は、特別に恵まれた環境をあたえられて勉強している身分ですので、遊びほうけている学生はいません。そのかわり、大学の勉強は厳しかったですよ。定期試験の場合も、先生が範囲を告げるだけ。日本のように傾向と対策のようなものはいっさ∵い教えてくれません。それでできなかったら落第ですから、みんな必死なんです。」
 授業形態は日本と同じで、講義形式がほとんどです。ただ、日本の大学に入って王さんが驚いたことがあります。
 「日本の学生は、ほとんど先生に質問しないんですね。こんな質問をしたら周囲の学生にどう思われるかというような遠慮もあるようです。中国では、授業が一区切りすると、学生がばらばらと教壇のまわりに集まってきて、先生に質問します。別に質問したからといって、平常点が上がるとか、評価が変わるというのではありません。ただ、やる気のある学生ほど、熱心に質問するものだという雰囲気はありますね。その熱意をわざわざ隠す必要はどこにもありませんから、いきおい質問は活発になるんです。」
 この指摘に、またまた考えさせられてしまいました。じつは王さんと同じような意見を、ほかの国の留学生たちからも聞かされているからです。どうも、日本の大学生の積極性のなさは、留学生の目に奇異なものと映るようです。だとすれば、知識注入型の授業だから学生が受け身の姿勢になっているというだけでなく、日本の場合にはもっと深い原因があるということになるはずです。

(渡部淳「国際感覚ってなんだろう」)