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課題集 エニシダ3 の山

★じゆうなだいめい / 池新
○春を見つけた、種まき / 池新
★ほっとしたこと / 池新

○南極探検 / 池新
 南極大陸は、そのほとんどが一年中厚い氷におおわれ、地球上で最も寒さの厳しい地域です。そのため、もともと南極にはだれも住んでいませんでした。南極の地形がどうなっているのかは、長い間なぞにつつまれていたのです。十八世紀に、イギリスのジェームズ・クックという人が初めて南極の探検に挑みました。クックは人類史上初めて、南極圏を航海しましたが、大陸を発見することはできませんでした。
 その後、何人なんにんもの探検家によって南方への探検が行われ、十九世紀になってやっと南極大陸が発見されました。かつては、南方に巨大な大陸が広がっていると言い伝えられていましたが、この探検の結果、巨大な南方大陸は存在しないことがわかりました。実際の南極大陸は、伝説上の大陸よりもずっと小さなものだったのです。
 二十世紀に入ると、南極探検はますますさかんになりました。探検家たちの関心は、地球の最も南の地点である南極点に、だれが一番先に到達するかということでした。多くの探検家が我こそはと南極点を目指しましたが、探検船が氷に閉じ込められて何か月も漂流したり、病気によって探検隊に死者が出るなど、探検は多くの難局に直面しました。それでも、さまざまな国が探検隊を派遣し、南極での越冬に成功して多くの経験を積み、人類は南極点に少しずつ近づいていきました。
 ノルウェーのロアルド・アムンゼンと、イギリスのロバート・スコットは、南極点への一番乗りを、ぎりぎりまで競ったことで有名です。スコットの一行は、エンジンをつけたソリのような動力雪上車と、馬ソリ隊を率いていました。ところが、二台の動力雪上車はすぐに故障してしまい、大切な馬まで寒さと疲労で次々と倒れてしまったのです。そして、とうとう人力でソリをひかなくてはならなくなってしまいました。一方、アムンゼンの一行は犬ゾリとスキーで移動し、ついに人類として初めて南極点に立ちました。∵アムンゼンは、そこにノルウェーの国旗を立て、周辺を調査しました。
 たいへんな苦難を乗り越えて、スコットも南極点にたどりつくことに成功しました。アムンゼンの南極点到達より一か月ほど後のことです。スコットたち一行は、ノルウェーの国旗が立てられているのを見て、たいへんがっかりしたと言います。南極点に立つことには成功しましたが、残念なことに一行は、帰る途中で遭難してしまいました。
 アムンゼンとスコットの明暗を分けた原因の一つは、防寒服だったとも言われています。アムンゼンたちは、アザラシなどで作られた毛皮の防寒服を着ていました。スコットたちの服は、牛皮ぎゅうがわを重ねて作られたもので、重いことと水がしみこみやすいことが短所でした。汗などを吸い込んだ防寒服は、最後は保温の役目をほとんど果たしていなかったとも考えられています。南極の寒さは、スコットたちの想像を絶するものだったのかもしれません。
 アメリカ合衆国が南極点付近に建設した観測基地は、南極点の一番乗りを競ったアムンゼンとスコットの二人ふたりの探検家に敬意をひょうして、「アムンゼン・スコット基地」と名づけられています。この二人ふたりの勇敢な探検家を、私たち人類は忘れることはないでしょう。

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(κ)