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課題集 エニシダ3 の山

★じゆうなだいめい / 池新
○雪や氷、なわとび / 池新
○すきな人 / 池新

○古代エジプトの声 / 池新
 エジプトのピラミッドの中のかべには、たくさんの絵文字がしるされています。タカやつぼ、人間や太陽のような、さまざまな絵で表された文字です。
 大昔、エジプトにはピラミッドを作ったすばらしい文明がさかえていましたが、いつしかほろびてしまいました。それから二千年の間、その絵文字をどうやって読むのか、どんな意味があるのか、だれにもわからなくなっていました。
 ところがあるとき、エジプトの砂の中から一枚の石の板が発見されました。そこには三種類のことばがきざまれていました。古代ギリシア語、昔のエジプト語、そしてピラミッドに書かれている絵の文字であるヒエログリフということばです。おそらく、同じ文章がこの三種類のことばできざまれているのではないかと思われました。この石の発見に、学者たちは興奮しました。当時、古代ギリシア語は知られていたので、それとくらべればヒエログリフが読めるかもしれないと思われたのです。この石にはロゼッタ・ストーンという名前がつけられました。
 しかし、事はかんたんにははこびませんでした。いくら名だたる学者たちが考えて研究しても、だれもヒエログリフの読み方をとくことができなかったのです。
 ロゼッタ・ストーンが発見されてから十年後、シャンポリオンというフランス人の少年が、お兄さんにすすめられてこのヒエログリフのなぞにとりくむことにしました。シャンポリオンは貧しい若者でしたが、もう既にたくさんのことばを学んでいました。
 シャンポリオンは、それからもさらにたくさんのことばを学びながら研究を続けました。研究を始めてから何年もたったある日、ひらめきがおとずれました。この絵文字には、音だけを表す字と、意味だけを描いた字が両方まざっているのではないかと。∵
 私たち日本人は、意味を表す漢字と音を表すかなをまぜた文を使っています。例えば、「森だ」という言葉では、「森」が意味で「だ」が音です。「森」は字を見ただけで木が何本なんぼんか生えている場所らしいことがわかりますが、「だ」には何の意味もありません。ヨーロッパの文字は、音だけを表すアルファベットで作られているので、文字に意味があるという発想がだれにもわかなかったのです。
 シャンポリオンは、ヒエログリフの読み方の表を作り、発表しました。ほかの学者たちも、やがてそれが正しいとみとめるようになりました。
 その後、シャンポリオンはあこがれのエジプトに行き、本物のエジプトの遺跡の中に入ることができました。そこで、シャンポリオンはぎっしりと描かれたヒエログリフに圧倒されて声も出ませんでした。なぜかというと、シャンポリオンにはそれらが自分が思っていた以上にすらすらと読めることがわかったからです。それはまさに「祖先からの声が聞こえてきたようだった」とシャンポリオンはしるしました。二千年もの間眠っていた声が、あちこちから聞いたこともないすばらしい神話やエジプト文明の物語を語りかけてきたのです。シャンポリオンは感動のあまり、二時間も動くことができませんでした。
 今では、エジプトに観光旅行すると、このヒエログリフ文字で自分の名前をつづったペンダントを作ってもらうことができ、おみやげに買って帰る人がたくさんいます。

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(λ)