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課題集 黄ツゲ の山

○自由な題名 / 池新
○ペット / 池新

○「環境サミットとか」を読んで / 池新
★ソフトウェアの機能と利点(感) / 池新
 ソフトウェアの機能と利点は混同されやすい。オープンソース方式で開発されているソフトウェア、とりわけLinuxには、確かに独自の機能があり、そのような機能があるからこそLinuxはこんなに引っ張りだこなのだと、ついつい言いたくなってしまうほどである。ところが私は、まともな会社の情報システム部長(MIS)から、「OSのソースコードをほしがる人がいるのはなぜですか」と質問されてきた。要するに、ソースコードをほしがる人間などいない、と彼らは言いたいのである。フリーソフトウェアのライセンスなど誰も必要としていない、必要とされているのはOSの機能だけだ、と言いたいのである。しかし、機能はかならずしも利点ではない。我われは、機能がもたらす利点について考えなければならない。
 コンピュータコミュニティを失望させているのは、きわめて専門的な市場においてさえ、最高の技術がめったに成功しないことである。つまり、どんなに技術的に優秀であっても、利益があがるわけではない。Linuxは、他のOSに比べて必要なメモリが少なくてすむ。他のOSよりも安く手にはいる。他のOSよりも信頼性が高い。これらによってLinuxは、ウィンドウズNTやOS/2よりも技術的に優れたOSとなっているが、それらは優れた機能であっても、Linuxに成功をもらす要因ではない。
 Linuxを最終的に成功に導いたり失敗に導いたりする要因は普通、「マーケットポジショニング」というテーマでくくられる。それはソフトウェアの機能とはまったく別の次元にある。我われは最近、ロータス社の上級エグゼクティブから、「世間の人たちはどうして別のOSを必要としているのですか」と質問されたが、Linuxは、「単なる別のOS」にすぎないのだろうか?それとも、OSの新しい開発スタイルや配布スタイルを象徴しているのだろうか?「単なる別のOS」でなければLinuxは成功する。
 上記の間に対する我われの答は次のようなものである。Linuxの開発を含むオープンソース運動は、我われのコンピュータ環境を今後とも大いに進化させるソフトウェア開発における革命でなのである。
 オープンソースは一つの機能である。ユーザが自分のソフトウェアを自由に支配できることは、ソースコードがオープンであるゆえの利点である。すべてのソフトウェアメーカーは、ソフトウェアに対する支配権を必要としている。そして、オープンソースは、今のところ、それを可能にするために業界が見出した最善の方法なのである。
 私の知る限り、多くの人びとは、様々なバージョンが出現してUNIXコミュニティが分断されてしまったのと同じ運命をLinuxが辿ると確信している。Linuxが従来のOSとは根本的に異なることを例証するためには、LinuxがUNIXと同じ運命を辿るかを考察するのが一番である。現在、UNIXには、三十種類ほどの――その大部分が互換性を持たない――バージョンが存在している。
 初めに指摘しておくが、UNIXをばらばらにした力は、Linuxをひとつにまとめる力として働いている。
 LinuxとUNIXとの大きな違いは、カーネルでもなく、Apacheサーバでもない。これら以外のいかなる機能でもない。LinuxとUNIXの大きな違いは、Linuxがオープンソースであるのに対し、UNIXが知的所有権に基づいて販売されているクローズドな商用OSであるという点である。商用OSのメーカーは、短期間に利益を上げることばかり考えて、自分のところの顧客に対してだけしか、自社製OSに加えた新機能を提供しない。UNIXは、このような機能がベンダーごと追加されてしまった結果いくつもの非互換なバージョンに分断されてしまった。こうしたことが起こるのは、ベンダーが自分たちのソースコードを独り占めして、他のベンダーに使用させないからである。UNIXはライセンス形態がクローズドで、UNIXコミュニティの誰もが新機能を使いたいと思っても、それを使えるのは、その新機能を追加したベンダーだけなのである。
 Linuxの状況は、まったく逆である。Linuxでは、あるべンダーの追加した機能が市場で好評を博せば、他のベンダーがそれをすばやく取り入れる。これは、他のペンダーがその機能のソースコードを使用できるからである。Linuxは、それを可能とするライセンスのもとに提供されている。
 一九九七年、Linuxコミュニティでは、従来のlibcライブラリと新しいglibcライブラリをめぐる論争があった。この論争は、多くの技術的な理由から新型のglibcライブラリを採用したレッドハット・ソフトウェア社と、従来のlibcイブラリをそのまま使用していたベンダーとの間で六か月にわたって吹き荒れた。そして、アンチLinux派は、これによりLinuxが衰退すると予言していた。しかし、実は、この論争こそオープンソースであるLinuxの利点を示す例に他ならない。というのも、どのベンダーも一九九八年の終わりごろまでには、レッドハット・ソフトウェア社のglibcライブラリのほうがより革新的で堅牢、安全、高性能であると判断して、とっととそちらへ切り替えてしまうか、近い将来の切り替えを予告してしまったからである。
 こんなふうにオープンソースは、何かを統一する圧力を生み出すことができる。共通の価値基準、要するにオープンな基準を満たすことができる、それを疎外する知的所有権の障壁を排除することができる。これこそオープンソースの力なのである。
 
 「オープンソースソフトウェア」(クリス・ディボナ、サム・オックマン、マーク・ストーン編著・O’REILLY)