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課題集 黄ツゲ の山

○自由な題名 / 池新
○学校 / 池新

○「後世から」を読んで / 池新
★レッドハット・ソフトウェア社(感) / 池新
 レッドハット・ソフトウェア社は、シグナスソリューションズ社からコンパイラを調達している。ApacheからウェブサーバをXコンソーシアム(DEC、HP、IBM、サンなどが協賛する共同企業体)からXウィンドウシステムを調達している。そして、それらを組み立ててRedHatLinuxを製造し、証明書や保証書をつけて販売している。
 自動車会社と同様、レッドハット・ソフトウェア社の仕事は、オープンソースソフトウェアを、最高のOSを作るための最適の部品として調達することである。しかし、OSに対する支配権を握っているのは、レッドハット・ソフトウェア社でなく、そのOSをレッドハット・ソフトウェア社から購入したユーザ本人である。だからレッドハット・ソフトウェア社の顧客は、我われが選んだsendmailではなくqmailなどのソリューションを使いたいと思えば、そうすることができる。これは、フォード社のトーラスを買った人が、標準装備のマニホールドをもっと高性能のものに取りかえようと思えばそうできるのと同じである。トーラスのオーナーは、自分の車に対する支配権を持っているから、その車のボンネットを開けることができる。RedHatLinuxのユーザは、自分でソースコードにアクセスし自分で変更を加えることができる契約条件のもとにRedHatLinuxをライセンスされている。したがって、自分で使用しているLinuxに対する支配権を持っているのである。
 独占者のルールに従ってまともに勝負しても、独占企業に対抗することはできない。独占企業には金があり人がいる。配給ルートがあり、研究開発力がある。要するに、あらゆるパワーを持っているのである。独占者とやりあうには、勝負のルールをこちらの具合のいいように変えなければならない。
 十九世紀末のアメリカでは、オペレーティングシステムではなく鉄道が独占状態にあった。主要都市間の輸送業務は、大手鉄道会社がほとんど独占していた。実際のところ、シカゴを始めとするアメリカの主要都市は、鉄道会社が所有するターミナル駅を中心に発展したのである。
 そのような独占企業の優位は、新しい鉄道が敷設されたり運賃が値下げされたりしても変わらなかった。彼らの優位がくつがえされたのは、インターステート高速自動車道路網が整備されたことで、トラック輸送会社が提供する宅配業務のサービスが鉄道会社が提供する駅から駅への限定的な輸送業務より人気を博したからである。
 現在、商用OSに対する知的所有権を持っている企業は、鉄道会社が自社の鉄道網を技術的に操作するようなことをそのOSに対してできる。つまり、商用OSのAPIは、鉄道の路線網や時刻表のようにすべての諸権利が所有者に帰属している。その知的所有権の保持者が思いどおりの使用料を請求できるようになっている。彼らはまた、OSとAPIの関係を、自分たち以外のアプリケーション開発企業の意見をまったく無視する形で、自分たちの好きなように変更することもできる。OS上で動作するアプリケーションプログラムの開発には、そのOSについての情報が不可欠だが、商用OSの知的所有権を持っている企業の強味は、そのOSのソースコードへのアクセスを握っていることである。
 ISVは、OSを提供する側にOSを支配されている状況から脱却したいと思っている。彼らが求めているのは、ベンダーによって支配されてなく、かつ、ベンダーによってメンテナンスされるだけのOSである。ISVは、そういうOSを手に入れることで、OSの知的所有権者が、アプリケーションプログラムの開発において、自分たちの最大の脅威にならないことを確信できる。今、ソフトウェア業界では、こういったOSを求める気運がどんどん広まりつつある。たとえば、コーレル社は、まさに商用OSの束縛から自由になりたいがために、同社のワープロソフトワードパーフェクトをLinux上に移植した。オラクル社がデータベースソフトウェアを移植したり、IBM社がウェブサーバソフトのApacheを正式にサポートすることにした理由もまったく同じである。
 (中略)
 Linuxの一番の利点は、オープンソースにある。つまり、Linuxは、信頼性や使いやすさ、システムの堅牢さ、または、ツールの多さに着目されて支持されているわけではない。Linuxが支持されている理由は、ソースコードレパルでオープンであることと、そのソースコードを、我われべンダーの承諾を求めることなく、自由に、自分の好きな目的のために使用できることである。
 「ソースコードのないソフトウェアはソフトウェアではない。」これは、宇宙空間に人間を送り出すのが商売のNASAで言われていることだが、NASAのエンジニアにしてみれば、バイナリベースの商用ソフトウェアの信頼性が高くても、それだけではソフトウェアとして不充分なのである。そのソフトウェアの信頼性が「きわめて高く」てもまだ不充分である。NASAは「完璧な信頼性」を求めている。自分たちのコンピュータシステムを頼りに、十二人の宇宙飛行士を時速千マイルで地球の周回軌道に打ち上げ、彼らの生命を維持するNASAにとって、ソフトウェアの欠陥で「死を意味する青いスクリーン」が画面上に表示されることは、万が一にもあってはならないことなのである。
 
 「オープンソースソフトウェア」(クリス・ディボナ、サム・オックマン、マーク・ストーン編著・O’REILLY)