昨日582 今日293 合計160118
課題集 黄チカラシバ の山

○自由な題名 / 池新
○学校 / 池新


★今後二十年ぐらいは(感) / 池新
 今後二十年ぐらいは、高齢人口の比率がかなり高くなる時期があるでしょうが、出産人口が少ないということは、やがてまた平準化されていって同じぐらいの数になるので、それまでの過渡期の問題だと言えます。
 したがって、「人口を増大させるか、あるいは、人口を縮小しながら均衡した社会をつくるか」という選択が働くことになります。
 しかし、これはいま始まった問題ではないのです。七十年ほど前に哲学者のバートランド・ラッセルが書いた文章を読むと、彼は、「文明が西洋化した場合には必ず人口が減る」というようなことを書き、かつ嘆いています。西洋化した文明は必ず人口の減少をもたらすというのです。
 それはなぜでしょうか。西洋文明は男女の平等を説きます。さらに、教育の機会均等と濃厚な教育サービスを求めます。その結果、自立した個人ができてきます。高度な教育を受け自立した個人というものは、必ず高度な職業を求めるようになります。そうすると、家庭的なサービスをするような労働力がしだいに失われていき、そういう労働力が失われていくと、子供は少ないほうがよくなってくるのです。そのため、子供が減りはじめるというわけです。
 たとえば、アメリカの人々は、一八〇〇年代にはアフリカ等から奴隷をかなり「輸入」して、家事労働をさせていました。ところが「人間は平等である」ということになり、奴隷が解放されると、それができなくなりました。
 そこで、次に発展途上国から移民をたくさん受け入れました。移民たちは安い給料で働いてくれるので、アメリカ人のホワイト(白人)は、自分は高い給料をもらえる職業に就き、家事労働のほうは安い給料で働く移民に任せようとしたのです。
 しかし、しばらくすると、今度はマイノリティー問題、要するに少数民族の問題が起きてきました。彼らも当然ながら自立を目指すので、彼らがアメリカ社会のなかで頭角を現し、自己主張をしはじめると、彼らに白人と同じ権利を与えなければいけなくなってきます。彼らも対等の権利を要求してくるようになるのです。そういう難しい問題が出てきます。
 こうなると、それまでは便利であったものが、今度はそれを管理するのが大変になります。アメリカは、黒人問題の次に、移民問題で苦しむようになったのです。
 ドイツでもそうです。トルコあたりから移民をかなり受け入れて安い労働力として使っていましたが、やはり移民問題が起きています。
 そういうことを考えると、今後、日本が少子化のなかで人口を増やしていくために、一つには、アメリカ型の、「収入の少ない国、発展途上国からの移民を受け入れ、労働力を増やすことによって、子供を産めるような社会にする」という方法があります。
 もう一つには、多少、縮小均衡ではありますが、「八千万人ぐらいにまで人口が減っても同質性を失わないような社会をつくっていく」という方法もあります。
 こういう選択が、やがて働くことになるでしょう。
 これが実際にどうなるかは見ものですが、おそらくアメリカ的な価値観に完全には入りきれないでしょう。日本人のなかには、たとえばアフリカ人が自分の家の家事をするというようなことに、感覚的に耐えられない人が多いと思います。一時期、東南アジアの人たちが日本に流入していましたが、やはり難しい問題が出ています。
 いずれにしろ、未来においては、どちらかを選ばなければいけない社会が来るでしょう。多民族問題に悩むか、あるいは、同質ではあるけれども、人口がやや減っていく状態を受け入れるか、この選択が待っているだろうと思います。
 どちらを取ることも可能でしょうが、どちらにも、問題はあります。
 
 「奇跡の法」(大川隆法)幸福の科学出版
 (これは宗教団体の本ですが、宗教とは関係のない立場で今日の情勢を常識的に概括しているという点で引用しました。現代はマスコミの多くが商業主義的な報道をしているので、世の中の情勢を常識的に判断する材料が少なくなっています。したがってこのような要点を押さえた論説は新鮮に映ります。しかし、この論説の可否は当の宗教団体の可否とは全く関係がないということを留意しておく必要があります。)