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課題集 黄チカラシバ の山

○自由な題名 / 池新
○未来 / 池新


★五月三日(感) / 池新
 五月三日、私はニューヨーク大学経営大学院で行った講演で、Microsoft はソースコードライセンスについて、どのような姿勢を取っているのかという話をした。商用ソフトを手掛ける企業が、自社のソースコードを共有するさまざまな方法の利点と欠点を明確にしたいと考えてのことだ。
 この講演で私は、Microsoftの「Shared-Source」(共有ソース)哲学は、商用ソフトのベンダーが顧客やパートナーとソースコードを共有しながら、その知的所有権はベンダー側に属するという、バランスのとれた手法だと説明した。知的財産は強力なソフトベンダーの支えとなるものだ。また私は、共有ソースとオープンソースの相違点も、いくつかの面から指摘した。
 私の発言に対して、多くの、さまざまに異なる反応があった。私は知的財産とソフト業界についての議論が必要だと考えていたし、今回確かに議論することができたと思っている。
 だが、この話は単なる学術的な議論以上の意味を持っている。商用ソフト業界は、世界経済を牽引する重要な要素だ。
BSA (Business Software Alliance)、IDCの調査によれば、この業界に従事する雇用人口は一三五万人、また、売上は世界全体で毎年一七五〇億ドルに達する。
 商用ソフトのビジネスモデルが有効であることは、こうした数値が証明している。また、このモデルは、各国の成長を促す鍵でもある。ほとんど全ての分野において生産性の引き上げを実現したのも商用ソフトだ。さらに、法人や個人が、多種多様のツール、情報など、PC時代が可能にしたさまざまなアクティビティを楽しめるようになったのも商用ソフトのおかげだ。
革新を促すメカニズム
 企業には、知的財産――特定の顧客や企業のニーズに応えるために手掛けた研究開発の結晶だ――を守るか、もしくは放棄するかの選択肢がある。米商務省が「国際科学技術」と題する報告書で次のように述べている。「革新とは、政府が科学技術の長期的発展のために資金注入した公民両方のセクターのパートナーシップと、民間セクターがリスクを恐れず投資を続けることを促すメカニズムによって生まれる」
 私たちは、このメカニズムのひとつが知的所有権だと考える。知的財産が保護されなければ、革新も、商用ソフト業界の健全性も失われる。過去五〇年間にわたる両方のセクターの協力関係は、知的所有権が保護される時、革新者の努力に対する報酬が約束されることを教えている。さらに、技術の前進は、経済成長や将来の協力関係、投資、定期的な革新の訪れを約束するものだということを示している。
 私は講演で、オープンソースモデルが市場競争に参加する権利があるかどうかを問うたのではない。ここでの問題は、何を選択するかということだ。法人にしろ個人にしろ、どちらのモデルを選んでも良いはずで、Microsofはこの選択権を支持する。一方、私は講演で、オープンソースソフトの多くが採用しているライセンスモデル「General Public License」(GPL)に関し、私が本当に問題だと考えていることについてははっきりと意見を述べた。
(中略)
 GPLが抱えている問題とは何だろう?一言で言えば、GPLは、優れた発想を優れた製品に発展させるという、アイデアと労力の流れを否定しているということだ。
 有名なイギリスの哲学者、論理学者、数学者のAlfred North Whitehead は、次のような言葉を残している。「なまの科学的発想は、すなわち求められている発明であり、後は磨きをかけて実用化されるだけだという考えは、明らかに間違っている。その間には創造力をもって設計をこなすという緊張した時間が横たわる。新しい方式を打ち立てる上で重要な要素とは、科学的発想と最終的な製品の間の隔たりを埋める作業にどうやって取り掛かるか、その方法を発見することにすぎない。次々とたち現れる障害を、統制をもって片端から攻撃していくという過程だ」
 言い換えれば、大きな科学的発見の後には、情報と実験データの検証が長く続き、その結果として新たな発想や理論の確認、論破、あるいは強化という段階に達するということだ。この過程を簡素化するためには、著作権も特許権も抽象的な発想や理論のために与えられるべきではない。そうしてもメリットがないからだ。
 Alexander Graham Bell、Thomas Edison、Henry Ford(彼らも数多くの特許を保有している)――。彼らのような伝説的な発明家が成功したのは、ひとえに、彼らの革新を、ユニークで、現実的で、利用価値のある製品として実用化するために、資金、業務管理の能力だけでなく、市場の行方を見ぬく洞察力を彼ら自身が有効活用できたからだ。彼らが製品を実用化するために要した創造力と発明力が、ビジネスの発端となった根幹の理論や発見に匹敵する重要性を持つことには、議論の余地はない。
 商用ソフトと、オープンソースソフトのモデルを比較する時は、それらの土台であるビジネスプランとライセンス構造を注意深く吟味する必要がある。そして、このように比較した場合、商用ソフトモデルのみが、本当に経済成長の維持に貢献する能力を備えていることが明らかになる。知的財産は、これまでも、これから先も、ソフトウェア業界――そしてほとんど全ての業界――の資産の中核であり続ける。この財産を保護し、常に改善を加えていくことは、全ての人に利益をもたらすことになる。
 
 筆者Craig Mundie氏は、Microsoftの上級副社長。
 「オープンソースに疑問が残る理由」 ZDNet/USA
 http://www.zdnet.co.jp/news/0105/18/e_mundie.html