昨日582 今日352 合計160177
課題集 黄チカラシバ の山

○自由な題名 / 池新
○個性 / 池新


★時々刻々と変動する情報が(感) / 池新
 時々刻々と変動する情報が、最末端のユーザーにまでタイムラグなしに届けられて、消費者が自分の好みで商品を選択するのに役立って初めて、ITはその真価を発揮する。
 情報の中でも、価格はもっとも重要な項目だ。
 公共料金は、もっとも基礎的で、広範な消費者の需要と結び付いている。
 こういう公益事業の市場を自由化することは、その国の市場全体に決定的な影響をもたらす。
 ところが、公益事業だからこそ、料金は自由化せず、固定化しておくべきだという考えがまだ残っている。
 それはデフレへの対応を遅れさせる大きな障害だ。
 こういう考えや規制を残しておく限り、せっかくのITも企業の内部にとどまって、広範な消費者の需要にはつながらない。
 ITの高度の能力も生かされないし、技術投資もペイしない。
 二〇〇〇年には世界中でITバブルが弾けたが、これも当然で、ITというだけで何か魔法の杖のように、奇跡の新経済、ニューエコノミーを生むもののような錯覚に支配された。
 ITはただの道具だ。
 ITだけで、何かできる訳ではない。
 この錯覚は、アメリカでも、日本でも、大きく膨れ上がって、特に株式市場を狂奔させた。
 ITを駆使しきえすれば、まったく新しい市場がすぐさま形成できるかのような期待感で、株式を買い上げたが、当然のことだが、そうはならなかった。
 安いコストで、大量の情報を流すことはできるようになったが、それだけで物が売れる訳ではない。
 いくら大量の商品情報が得られるといっても、それだけでは一方的な広告を押し付けられているに等しい。
 インターネットで商品を買ったら、その品物が期待どおりの商品で、かつ納期までにきちんと届けられなかったら、消費者は満足しない。
 情報だけでなく、商品を届けるためには、仕入れも必要だし、在庫も必要だ。なにより物流のネットワークが整備されていなければならない。
 インターネットで情報は処理できても、物までは運べない。
 そのため多くのいわゆるドットコム企業は、結局、消費者の期待に添えなくて急速に業績を落とした。
 ITは、いくら最新鋭でも、武器の一つにすぎない。
 本体が貧弱な人間が、ITで武装しても、実際の戦いには勝てない。
 やはり本体が立派で技量に優れた人間が使ってこそ、真価が発揮される。
 やはり市場の占有率も高く、実績も信用もある、オールドエコノミーがIT化して、初めて本当のIT時代が拓かれる。
 しかも単に社内体制の合理化の道具にするだけでなく、広く一般消費者の手元に情報を届け、また消費者からの情報が、即座に企業に届く。
 そういう相互関係が生まれて初めて、ITへの投資が生きる。
 それがどういうものかは、まだ世界中で模索中だ。
 公共料金は、広範な消費者の利益に結び付いているから、その重要なターゲットの一つになりうる。
 
 「デフレ時代の成功法則」(長谷川慶太郎)徳間書店