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課題集 黄タラ の山

○自由な題名 / 池新
○ペット / 池新


★海外の投資家が(感) / 池新
 海外の投資家がアメリカの株式市場に投資した資金は株価を押し上げ、アメリカの投資家の所有株式の価格を大幅に上昇させる。すなわち、アメリカはキャピタルゲインで好況を迎えるという図式である。
 しかし、好況に浮かれて消費が拡大していくと、いずれ限界が訪れる。海外からの資金流入が止まった段階で、新たに株式市場に流入する資金はなくなり、株価は頭打ちとなってしまう。すなわち、天井である。
 こうなったら、もう暴落を待つしかない。アメリカ国民が消費してしまったお金は、他人のお金である。しかし、気前よく使い込んでしまって、もはや株式市場に戻ることはない。こうなると、暴落というかたちで、その支払いをするしか方法がない。
 好況による給与水準の上昇、物価上昇、企業業績の下方修正、その他の政治的な要因……、すべてが暴落につながっていく。
 そして、いざ暴落が始まれば、海外の投資家がアメリカに投資した資産は大幅に減価することになる。アメリカの国民がキャピタルゲインとして得て消費に回ったお金は、海外から流入した資産を減価させることによって帳尻を合わせるしかない。
 アメリカ市場で周期的に暴落が起こる原因は、アメリカの経済戦略そのものにあったのである。
 この循環をどこまでも続けていくのが、アメリカの金融システムなのである。
 日本の株式市場は、アメリカ市場に追随して暴落する。これまでもそうだったし、これからもこの関係は大きく変わることはないだろう。
 しかし、ここで忘れてはならないのが、日本が生産大国であるということである。
 日本はアメリカと違って生産力があるから、物をつくり、それが売れている限りは儲けが出る仕組みになっている。しかし、いくら生産しても注文が増えなければ設備投資はできない。いま、日本の景気は低迷しているから、どのような産業でも、おおむね前年比一〜五パーセント程度の売上増にとどまっている。新たに設備投資するような状況ではない。
 それでも、生産が続いている限り利益はきちんと出続けるわけだから、たとえ利幅が多少縮小していたとしても、お金は貯まり続ける。日本がこの不況下に、貿易収支で一三兆八〇〇〇億円という黒字を出していられるのも、生産によって得た余剰資金がいつも手元にあればこそである。ちなみに、アメリカの貿易収支は二六八〇億ドル(三〇兆二八四〇億円)の赤字である。
 日本の市場がアメリカ市場とともに暴落しても、それを埋めるに足りる自己資金が、日本にはあるということなのである。アメリカは、自力では穴を埋めることができない。暴落によって帳尻を合わせるのみである。
 一九世紀のイギリスは、現在のアメリカのように世界中から資金を集めていた。大英帝国は七つの海を支配し、現在のウオール・ストリートの役割をロンドンのシティが担っていたのである。
 現在でも、イギリスは国内はもとより海外に膨大な資産を所有している。イギリスは、その資産を運用してお金を生み出している大金融国家なのである。
 この点でイギリスは、建国以来、資産がすべて借り物で海外資産をもたないアメリカと大きく違う。
 イギリスは、アメリカに資産を運用させ、その利益を吸い上げている。イギリスは、金融の世界ではアメリカに負けないほど、戦略的、積極的である。主体性のないままアメリカに金を奪われる日本とは大きく違う。これは、イギリスのみならず、フランスやドイツなどEU諸国に一様にみられる特徴でもある。
 イギリスやEUの国々は、昨年一年間、アメリカ株を買い続けてきた。アメリカ市場が暴落したからである。株価が連日のように下げ続けるなか、イギリスやフランスはどんどん買い下げていった。
 一方、日本の投資家がいつ買ったかというと、アメリカ市場がもっとも高騰した一九九八年から九九年にかけてである。このため、二〇〇〇年春以降のアメリカ市場の低迷で、日本の投資家は大きな含み損を抱えてしまうこととなった。
 日本の投資家は、株価が少しでも上がったら、損切りのために売るということを続けてきた。たとえ、株価が一年前に買ったときの半値以下になっていたとしてもである。
 こうして日本は損を確定させてしまったが、それを横目にイギリスやEU諸国は次の仕込みに精を出していたのである。世界的規模からみても、日本がいかに資産運用が下手であるかがおわかりいただけると思う。「ならば、日本もヨーロッパ諸国の真似をすればいい」そう思われる方も多いだろう。しかし、バカげた話と思われるかもしれないが、日本はこのままでいい。日本は新たな富を生む国であり、損失の埋め合わせを自国でできる国なのである。日本が適度に損をすることで、世界の金融バランスの均衡がとれているのである。

 「2002年日本経済バブル再来」(増田俊男)