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課題集 黄タラ の山

○自由な題名 / 池新
○学校、危機意識 / 池新


★ITは、大きく二つに分けてう(感) / 池新
 ITは、大きく二つに分けて考える必要がある。
 まず一つは、eコマースなどのような、いわゆるインフラとしてのITである。
 メーカーから消費者まで、従来の流通ルートを通さずに、より短時間、より低コストで商品を届けるために、新たなシステム、あるいはソフトを構築する。これが、eコマースである。
 こういったシステムやソフトは、いかなる価値を創造しているのだろうか――。
 私に言わせれば、なんの価値も生んでいない。
 強いて価値を見出すとすれば、過去何十年にもわたり、利用者にとっては不便でしかない流通ルートに膨大な投資を続けてきたものが、新しいシステムの開発によって不要になったというところだろうか。従来のシステムには、これ以上の投資は不要になり、やがて消滅していくだろう。
 インフラとしてのIT産業に、従来の会社の資産が移動しただけである。すなわちインフラとしてのITとは、新しい価値を生むのではなく、従来からある価値を吸収しているだけなのである。
 そもそも、それまで何もなかったところにまったく新しいものが創り出されるからこそ、価値が生まれるのである。
 その点で、インフラ産業は、価値を生み出す産業とはいえないことがわかるはずである。
 日本政府の提唱するIT革命は、いまのところ、このインフラ産業のみを指してITと呼んでいるようである。
 インフラの整備は有限である。あるレベルにまで整備されたら、もはやそれ以上便利にする必要がない。あくまでも、オールドエコノミーの生産性を上げるためのお手伝いの役割しか果たすことができない。しょせん、価値を創り出す産業の召し使いでしかない。
 しかし、いまの日本をみていると、どうやら本気で召し使いを主人公にしようとしているようである。
 もちろん、いま日本は、ようやくIT革命が始まったばかりである。光ファイバーがようやく普及し始めた段階で、インフラ産業にはまだまだ発展の余地が十分に残っている。
 日本のIT産業というと、すぐ名前があがるのがソフトバンクだが、この会社の事業はインフラ産業である。
 このソフトバンクでさえも、新しいインフラを開発して含み資産を増やし、その含み資産でまた新たにインフラを開発するという流れで動き続けている。動きを止めた段階で、インフラ会社としての使命が終わってしまう。価値を生み出さないタイプの会社だからである。
 すなわち、ソフトバンクという会社は、顧客を引き込むための便利なインフラを、いつまでも開発し続けなければならない宿命を背負った企業なのである。
 現状のようにIT=インフラという風潮が世の中の認識としてある限り、インフラ整備が終わればIT革命は終了したということにもなりかねない。
 日本各地に、一日に数台しか車が走らない高速道路が存在している。公共事業の名目で湯水のごとく金を使い、とにかく道さえ通せば採算などはどうでもいいといった姿勢が、過疎の村同士をつなぐだけでまったく利益を生み出さない高速道路を数々誕生させる結果となったのだ。
 いま政府がIT化に躍起になっているのも、情報通信網整備という新たな公共事業を見つけたからにすぎないのではないだろうか。高速道路と同様に、情報通信網だけ整備して、あとは皆さんどうぞご勝手に、となりはしないか。やはり、IT革命とは絵に描いた餅にすぎないのではないか――。
 そんなことはない。
 先に、ITは二つに分けて考えるべきだと述べた。一つ目はインフラだったが、二つ目はコンテンツである。
 コンテンツとは、文字どおり情報の中身、インフラ産業が張りめぐらせた通信網の上を縦横無尽に駆け回るソフトのことである。
 一つの例として、ポケットモンスター(ポケモン)をあげてみよう。日本で生まれた子供向けのアニメーションだが、これが世界中で大ブームを巻き起こしている。
 各国でテレビ放映されたほか、一九九九年夏にアメリカで上映された映画は興行ランキング・ナンバーワンを記録するなど大ヒットした。
 インターネット小売業最大手のアマゾン・ドット・コムは、さっそくこれに目をつけ、ポケモンのキャラクター商品の販売を開始した。ヨーロッパでもポケモン熱は高まる一方で、イギリスでは人気商品の一つであるポケモン・カードをめぐって恐喝事件すら起きている。
 犯罪などは問題外だが、このポケットモンスターは全世界の子供たちを熱狂させるほど、魅力のあるキャラクターなのである。
 ポケモンのようなアニメだけでなく、コンテンツとはさまざまな媒体に乗って届けられる情報そのものである。音楽、画像、ニュース、映画、テレビ番組、文字情報など、ありとあらゆる情報が、放送、インターネット、携帯電話などで届けられる。
 光ファイバーが引かれていても、それだけではただのケーブルでしかない。ケーブルを経由して映画やニュース、その他の情報が届けられるから、人はそれに価値を認めて喜んで対価を支払うのである。
 コンテンツこそ、IT革命が創り出す価値そのものである。この価値創造型のIT産業こそ、IT革命の主役なのである。

 「2002年日本経済バブル再来」(増田俊男)