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課題集 黄ススキ の山

○自由な題名 / 池新
○学校 / 池新

○「後世から」を読んで / 池新
★素直さだけの平均点の選手は(感) / 池新
 藤田…素直さだけの平均点の選手は、上に突き抜けていくことができません。素直で七十点の選手は指導者が何を言ってもよく聞いてそこそこにやりますから使いやすい。だが、大きな仕事はできません。大きな仕事をするのは、欠点だらけでもどこか百二十点の長所を持っている選手です。そういう選手は年齢とともに安定してきて、コンスタントに大きな仕事をしてくれます。
 上田…やはり、我が強くないと勝敗にこだわるスポーツはできないですね。試合なんかで、コーチから、「あんなやつをよく使いますね」とよく言われますが、そこに監督という仕事の魅力があります。
 藤田…僕なんかも現役のとき、指導者から「生意気なやつだ」と思われたに違いないんです。でも、力があるから使わざるを得なかったと、いまにして思います。だが、その場に立ったら必死の思いで奮起しましたよ。僕らの時代の巨人軍は 〃大個性〃 の選手たちの集団で、プライベートな面など勝手気ままでしたから、監督は苦労されたと思いますが、戦いとなると監督の命令一下、「死ね」と言われれば死ぬような心理状態で戦っていました。
 一番いけないのは素直に監督の言うことを聞きながら、何もしないやつ。これが一番いけない(笑)。
 (中略)
 上田…それと、僕は、〃アナウンス効果〃を意識してねらいました。勝利監督のインタビューでは「逆転の慶應です」なんて言うんです。それが新聞の活字になったのを相手が読んでくれていると、いざ本番のとき「逆転されるぞ」というプレッシャーになるし、わがほうの選手は「また逆転できる」という気持ちになっています。
 藤田…いいホラは吹いていいんですよ。いいホラを吹いて相手を暗示にかけるのも戦法の一つです。
 上田…その戦法ということでは、僕は試合中、積極的に選手を入れ代えます。試合では七人まで交代させられるので、その枠を目いっぱい使うようにしているんです。それも、後半を重点的に、リードした瞬間にポンと代えちゃう。控えのままで試合に出られないのはかわいそうという気持ちも少しありますが、それまで何もしてないやつは元気じゃないですか。選手はそんなに差はないですよ。リードすると選手はどうしても守りの気持ちが生まれるので、そうならないためにも、選手を交代させる。二万何千人もの観客が見ていて、テレビ中継もされているなかで一所懸命にならないほうがおかしいわけですからね。
 藤田…僕はファームから推薦されて一軍登録した選手はすぐ使うようにしていました。機が熟したというか、その選手が一番調子のいいときだからで、一軍に上げてもベンチに置いておいたらダメなんです。その選手が活躍すればチームも活気づきますし、ファームもまた「一軍に上がればすぐ使ってもらえる」と活気づきます。
 (中略)
 藤田…これから新しく監督になる方に、一言申し上げておきますと、自分のカラーを出そうとして、前の監督とまったく違ったことをするのはおやめになったほうがいい。自分のカラーを出したい気持ちはわかりますが、全部否定してかかるのではなく、いいものは受け継いでいく。
 上田…前回、僕が監督を辞めた後がそうでした。当時は監督の任期の関係で日本一になりながら退任したのですが、次の人は僕がやってきた指導スタイルを全部排除したんです。僕が作り上げたつもりの 〃強い慶應〃 は一シーズンももたずに崩れ去りました。以来ずーっと低迷したままだったんです。
 藤田…そういうことになるから、無理に違うカラーを出そうとするのは危険なんです。
 
 (藤田元司上田昭夫の対談「致知二〇〇〇年七月号」より抜粋)