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課題集 黄クリ の山


○「荒木博之の」を読んで / 池新
 仮にいま、平均的なサラリーマンが六〇平米のマンションに住んでいるとしよう。いま引っかかっている問題の元凶は、まさにこの六〇平米のマンションにあるのだ。
 それではあなたがいま住んでいるマンションが六〇平米から一〇〇平米になったら、どういうことが起きるだろうか。
 マンションを建てるところから始めると、まず土地の基礎工事をする。鉄骨を組んで、コンクリートを流し込んで外枠をつくり、外壁にタイルなどを貼る。それだけでも基礎工事業者が仕事をし、鉄骨屋が仕事をして、コンクリート業者、セメント業者、生コン業者が仕事をする。タイル業者も左官屋も仕事を得る。
 エレベーターの設置は電気工事業者とエレベーター業者の仕事になる。さて今度は各室の内装である。まず電気関係、照明関係、そして便所や台所の水回り、厨房、カーペットに壁紙、ガラスなど、数え上げればきりがない。
 そういったマンション業者が取り仕切る部分だけでも、いったいどのくらいの業種の仕事が発生するのだろうか。一軒のマンションが建つことによって、少な目に見ても三〇か四〇もの種類の業者が仕事をできるのである。
 ところが、同じ建設工事でも、橋や道路をつくるという話になると業者の種類ははるかに少なくなる。本当はもっとたくさんいるのだろうが、鉄骨業者とセメント業者、塗装業者ぐらいしか思いつかない。そんなイメージである。
 このことだけでもわかるように、おそらくあらゆる産業のなかでも、住宅産業は特別にすそ野が広いのである。
 もう一つすそ野が広いものに自動車がある。一台のクルマはおよそ三万点の部品からつくられるのだが、住宅で同じ教え方をした場合には四〜五万点にも上るらしい。
 しかもその部品は、まったく異なった業種の人々によってつくられるのだ。同じすそ野が広いといっても、すべての部品が組立工場に集まり、そこで組み立てることによって一気に出来上がるのとは違って、左官屋さんや電気回り、水回りのそれぞれ異なったプロが別々の免許、別々のノウハウを持って部分部分で完成させていくのである。
 住宅をつくるということだけでも、実に多種多様、非常に多くの人、業者が加わる点で、景気を良くする効果はきわめて高い。
 さて、一〇〇平米のマンションを買って、いままでの六〇平米のマンションから引っ越してくる。まだ何もない部屋で、まず最低限しなければいけないのはカーテンをつけることだろう。でないと外から丸見えである。
 六〇平米のマンションで使っていた家財道具を運び込む。家具がしかるべきところに納まって「やれやれ」と部屋の中を眺め渡してみると、なんだか部屋が妙にだだっ広い。「母さん、このテレビ、前の六畳のリビングで観ていたときはちょうどいい大きさだったけど、この一二畳のリビングだと物足りないね。もっとワイドな大画面テレビを買おうか」
 そういえば、以前ワイドテレビを買おうとしていたことがあったのだが、結局当時のマンションでは大きすぎるということで、迫力ある大画面で映画を観たいという子供たちを我慢させたのだった。その大画面テレビが、一〇〇平米のマンションなら買うことができる。
 今度は部屋数も多いから、お父さんの書斎もできる。机と椅子を買う。いままでは置く場所がなかったということで諦めていたパソコンも買おうか。書棚も必要だ。書棚を置いてみると、中身が貧弱である。いままでは邪魔になるからといって、買いたい本を買うのも我慢していたから、持っている本が少ないのだ。それじゃあ本屋に行って一〇冊ほど買ってこようかということになる。
 家が広くなり、置き場所が増えると、自分でも気がつかなかったが、実は買いたいものが山ほど出てくる。
 老後も不安だけど、俺も一生懸命働いているんだから、これぐらいのぜいたくは許されていいんじゃないか。書棚いっぱいに好きな本を買って、暇なときに独り書斎で読書するぐらいは。前は狭かったからできなかったけど、いまはできるのだから。住宅が大きくなることで、そういう人は確実に増えてくるのである。住宅が大きくなるかどうかは、中期的に見て、日本経済が立ち直るかどうかを決定するもっとも大きなカギになると私は思う。
 
 (堀紘一「不況に勝ち抜く」)

○「広告は」を読んで / 池新
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