昨日795 今日528 合計157144
課題集 黄クリ の山


○家 / 池新

○「実は現在」を読んで / 池新
 均衡、たえざる成長への過信は日本だけの問題ではない。アメリカではいま、株式投資がブームになっていて、ニューヨークのダウ平均はこの三月(一九九九年)ついに、市場最高値の一万ドルを突破した。
 ベンチャー企業を数多く上場しているナスダック(NASDAQ)に至っては、ヤフー、アマゾン・コムといったまだあまり利益を出していない会社、極端なものになると創業以来一度も利益を出したことのない会社まで上場でき、インターネット関連の有望な会社というだけで買い注文が殺到し、高値をつけている。
 こうした加熱するベンチャー株ブームをみていると、私は土地神話に浮かれていたバブル期までの日本人に感じたのと同じ、そら恐ろしい気持ちにとらわれる。
 いまもてはやされているコンピュータ産業や通信産業には、確かに新しい技術がある。この技術をもって光ファイバーでネットワークをつくれば、全米最大の電話会社AT&Tよりはるかにコストが低い電話線網ができるという話がある。いくらでも需要に応えることができるから、将来は大変な会社になるだろうということで株が買われる。
 だがそんなちょっとした技術革新で、日本のNTTのように一〇〇年以上にわたって基盤を築き、技術開発力を培ってきたAT&Tという会社がもろくも敗れ去ってしまうのだとしたら、新たな覇者はそれ以上にもろいはずである。
 なぜならこの会社は、そのちょっとした技術を超えるもう一つの技術革新をなし遂げる会社が現れたら、存在意義を失ってしまうからだ。
 AT&Tのほうは、長年の投資によって人的資源、幅広い技術開発を支援する技術研究所、不動産など、さまざまな蓄積を持っているから、ワンバンチで倒れることもなく、巻き返しも可能だが、ワールド・コムやアマゾン・コムといった昨日今日できた会社には、そんな蓄積はない。いいパンチをもらえばひとたまりもなくマットに沈み、リングを去らなければならなくなるだろう。
 そういう大きなリスクを秘めた株に一〇〇ドル、二〇〇ドルという値をつけるような買い方をする神経は、正直言って私にはわからない。そうした、非常に局部的な条件のみに注目する行き方は、土地の値段は決して下がらないという「信仰」のもとに不動産を買い漁ってきた人たちと同じように愚かな行為だと、私には見える。
 
 (堀紘一「不況に勝ち抜く」)

○自由な題名 / 池新