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課題集 黄カキ の山

○自由な題名 / 池新
○家、自己主張の大切さ / 池新


★アメリカのビッグビジネスは(感) / 池新
 アメリカのビッグビジネスは、他の国々と同じように、政治家を擁している。民主党も共和党も、裕福な産業界から恩義を受けている。一九九六年の議会選挙および大統領選挙では、およそ一〇億ドルが費やされた。もちろん、資金の提供者はその投資に対して潤沢な報酬を得る。場合によっては、彼らの投資回収率は献金の百倍にもなることもある。つまり、彼らがある政治家に提供したお金一ドルにつき、一〇〇ドルの税免除、あるいは国の公共事業の請負契約を獲得することができるということだ。
 アメリカのビジネスエリートは、昔のローマの将軍たちのように経済、社会、政治を支配している。アメリカ政治は今まで以上にお金でコントロールされている。その結果、税負担は次第に富裕階級から貧困層および中産階級の肩へとシフトしてきている。一九五〇年から一九八〇年まで、高額所得者層の所得税率は七〇%から九〇%、そして低所得者層に課せられる社会保障税は四%から九%だった。しかし、一九九七年までに、所得税率の最高は三九・六%まで下がり、社会保障税は一五・三%にはね上がった。富裕階層の献金者が政治家から得る具体的な恩恵とはこういうものなのだ。
 税負担の貧困層への移行は、投資および成長促進の名のもとに正当化された。私が自著『アメリカの大きな偽り(The Great American Deception)』の中で示したように、一九八〇年代及び一九九〇年代、投資率は少ししか低下していないのに、経済成長率が急激に低下した。これはちょうど、産業界が政界への投資に対して、膨大な報酬を得ていた頃に起こった。一九五〇年代には企業は連邦税徴収額の二五%を支払っていたが、一九九七年には企業の税負担分は一〇%にまで下がった。より多くの資金を投資に回したのだろうか。そうではない。そんなことができるはずがない。貧困層や中産階級への過酷な税負担のせいで、消費者の需要は以前ほど伸びなかったではないか。売り上げが伸びなければ、どうして投資を増やすことができようか。ビッグビジネスがアメリカ経済を完全に牛耳り、その工場が海外の安い労働力を利用していることを考えれば、その経営者たちの賃金が急上昇しても驚きではない。しかし驚きなのは、生産性が向上し続けているのに、労働者の実質賃金が着実に減っていることである。経営最高責任者とその従業員の実質賃金指数を表わした図1(略)を見てみよう。実質賃金とはその人の俸給の購買力を指している。一九七六年の両者の賃金指数を一とするなら、一九九七年までに管理職の指数は一七五%上昇し、同時期、労働者のそれは一四%低下した。その上、労働者の税負担は跳ね上がり、管理職のそれは大きく減った。
 ビッグビジネスがアメリカを支配しているという点に疑問が感じられるだろうか。
 図1(略)からは感じられない。
 図2(略)は富の格差の動向を示したものである。収入と富の違いはなんだろうか。収入とはある人が仕事や投資から稼ぐものである。富とは蓄えられた資産、あるいは過去から受け継がれた資産である。富の場合、その格差はさらにすさまじくなる。
 図2(略)は、一九二九年から一九九七年までの富の格差の動向を示している。大恐慌が始まった一九二九年には、アメリカ人の一%が国の富(資産)の三六%を所有していた。一九四九年までにその割合は二一%に落ちた。それから着実に上昇し始めて、一九九七年にはアメリカ人の一%がアメリカの富全体の四二%を所有していた。
 アメリカビジネス帝国がその勢力範囲を拡大しつつある中、世界中で収入および富の格差が拡大していることは驚きではない。資本主義の普及は、世界レベルで不平等が拡大しつつあることを意味する。それは中国でも、ロシアでも、そして旧ソビエト衛星国においてさえもそうである。不平等の拡大は、常に貧困の拡大と経済の不安定を招いてきた。
 
 「株式大暴落」(ラビ・バトラ)たちばな出版より