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課題集 黄カキ の山

○自由な題名 / 池新
○個性、勉強の意味 / 池新


★帝国の第二の特徴は(感) / 池新
 帝国の第二の特徴は、支配国家がその植民地から安い労働力を得られることである。確かにこの特徴は、今日のアメリカに当てはまる。アメリカは二つの方法で安い労働力を得ている。まず、合法および不法移民の流入により、アメリカの労働供給が拡大し、国内賃金が抑制される。不法移民のほとんどはメキシコやラテンアメリカからやってきて、最低賃金で働く。移民の流入がなければ、アメリカの賃金はずっと高いものになるだろう。ここで言及しておかなければならないのは、人々はアメリカへの移住を熱望し、その移住は自発的に行われるということだ。それは、この国が豊かで自由な土地だからである。次にアメリカの多国籍企業は、ラテンアメリカ、アジア、アフリカなどで数多くの労働者を雇用し、現地レベルの賃金(米国内賃金からすればわずかな額)を支払っている。児童労働を含むこの労働力によって生産された製品がアメリカへ輸入され、アメリカの賃金はさらに押し下げられる。しかし、それによって多国籍企業は高い利益を得ることができ、また管理職は異例な高収入を得ることができる。ここでも、アメリカは武力を行使せずに自然にこれらの利益を得ているが、その利益はビジネスエリートのためのものであり、彼らがそのほとんどを獲得している。アメリカで最も裕福な階級はビジネスマンである。一九八〇年以来、他の階級の人々の収入は停滞しているのに、ビジネスエリートの収入と富は急上昇してきた。ビジネス階級の税負担は減少する一方で、貧困階級および中産階級の税負担は大きく上昇している。したがって、アメリカビジネス帝国では、過去の植民地帝国と同様、海外からの安い労働力が、エリート階級に大きな利益をもたらしているのだ。
 帝国の第三の特徴は、たいへん興味深いものである。支配国がその植民地に対して貿易黒字を強制する一方で、支配国自体はその国内の消費レベルを押し上げるために、貿易赤字状態にあることだ。同様にアメリカも、一発の銃弾を発砲することなく一九八三年以来世界に対して高い貿易赤字レベルを保っている。古代ローマは、その属州に重税を課し、徴収した税収で貿易赤字の一部を賄い、実質上、属州から無料で一定の物品を獲得していた。イギリスも、イギリス人総督や軍人が属領に提供する行政サービスに対して、高い代価を支払わせることで、属領から無料で物品を得ていた。アメリカも今日、世界から無料で一定量の製品を得ている。どうしてそれが可能なのだろうか。
 ドルは世界で最も通用する通貨であるので、貿易の拡大にともない、より多くのドルが必要になる。ある国の通貨が通商を行うために世界的に通用するものである場合、それは基準通貨と呼ばれる。ドルは基準通貨であり、円、ポンド、ドイツマルクなどもそうである。しかし、すべての基準通貨のなかで、ドルが最も通用する。世界の国々は、ポンドやマルクや円の買いだめはしたがらないが、一九八三年以来、ドルの買いだめをしている。すなわち、アメリカはその輸入超過分(輸出より輸入の多い分)をドル紙幣で支払っているのであり、そのための目に見えるコストといえば、ドル札、特に世界の国々で大変好まれる一〇〇ドル札などの高額紙幣を印刷するコストのみである。
 これらの高額紙幣は、アメリカ国内より国外でより多く流通している。世界の国々が、品物と交換に喜んで紙幣を受け取る理由については後述する。ここではアメリカが一九八〇年代、一九九〇年代と世界の国々に対して持続的な輸入超過を保ちながら、それに対する代価は全く負担していないことを言及するにとどめておこう。
 ある国が、金や銀を輸出することなく、自由国家に対して持続的な貿易赤字を抱えていることは歴史上かつてないことだ。しかし、アメリカは何とかそれをやって退けた。確かにこの国は一九世紀にも持続的な輸入超過だったが、そのときはヨーロッパがアメリカの投資プロジェクトにお金を貸すことで、輸入超過分を賄った。しかし、今ではそんなことは重要ではないようだ。世界はドル紙幣を獲得し、それをアメリカの株式及び債券市場に投資する。通商のプロセスが逆転したのだ。過去には、国が海外からお金を借り、その貿易赤字を埋めたので、赤字は借入額により制限された。しかし、アメリカは今、輸入したい放題輸入し、世界はドルを蓄積する。もちろん、他の国々はまだ旧来の規則に従っている。イギリス、日本、ドイツなど他の基準通貨国でさえ、輸入超過を続ければ、通貨価値は下落するし、国債に外国の投資家を引きつけるために、金利を上げざるを得ない。しかし、アメリカは今日、膨大な貿易赤字と強力な通貨をもつ唯一の国である。これはすべてビジネス帝国のたまものである。貿易赤字は各国の生活水準を比較する際、非常に興味深い特徴を示す。
 通常、国の生活水準を測る基準として、国民一人当りGDP(国内総生産)が使われる。この基準でみると、アメリカはスイスやドイツより劣っている。しかし一人当りの消費レベルを比較すると、アメリカが第一位である。これはある国の実質的な消費量はGDPプラス貿易赤字、あるいはGDPマイナス貿易黒字に匹敵するからだ。明らかに、アメリカ人はそのビジネス帝国から大きな恩恵を受けている。これがいつまで続くかについては、最後の章で検証することにしよう。
 
 「株式大暴落」(ラビ・バトラ)たちばな出版より