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課題集 00エニシダ の山

★じゆうなだいめい / 池新
○春を見つけた、種まき / 池新
★ほっとしたこと(できるだけ自由な題名で) / 池新

○李広(りこう)は、トラを(感) / 池新
 【1】李広りこうは、トラをさがしながら、どんどん山おくへはいっていきました。七日七夜(なぬかななよ、やすみもしないで、トラをさがしました。けれども、トラのすがたは見えません。
 【2】「ああ、いったい、おとうさんをころしたトラは、どこへいってしまったのだろう。」
 八めのことです。李広りこうはふかい谷間におりていきました。がくれたのもわすれておくへおくへとはいっていきました。【3】そのはずです。空にはまんまるのお月さんがでていて、あたりはまるで昼のようにあかるかったのです。
 しばらくすると、ウマがぴっと耳をたててとまりました。
 【4】見ると、とおくの木かげに、大きな、大きな、トラが、こちらをむいて、ねそべっています。
 「あっ、ついにいたぞ。おとうさんをころしたトラにちがいないぞ。」
 李広りこうは、いちばん大きな矢をぬいて弓につがえました。【5】そして、じりじりとウマをすすめてちかづきました。
 ウマをすすめると、トラも気がついて、うごいたようにおもえました。
 「よし、いまだ。」
 李広りこうは、ちからいっぱい弓をひきしぼり、トラの(と目のあいだをねらって、はなちました。
 【6】みごとにめいちゅうしました。一本の矢で、トラはうごかなくなったようです。
 「おとうさんのかたきをとったぞ。」
 李広りこうは、ウマからとびおりると、刀をかまえて、トラのところへかけつけました。
 【7】ところが、どうでしょう。トラだとばかりおもっていたのはかたい岩です。岩が、木かげをとおしてさしてくる月の光で、トラそっくりに見えたのです。しかし、おどろいたことに、矢は、かたい岩に、まちがいなくつきささっていました。
 【8】李広りこうは、ざんねんにおもうより、かたい岩に矢がささったこと∵がふしぎでなりませんでした。李広りこうは、岩にむかって、もう一度弓をひいてみました。【9】しかし、矢は、カチンと音をたてて、はねとんでしまいました。李広りこうが、にくいにくいトラだとおもいこんでいたからこそ、岩にも矢がささったのです。【0】

 (今西祐行
 「子どもに聞かせるえらい人の話」(実業之日本社)