昨日252 今日197 合計152287
課題集 00エニシダ の山

★じゆうなだいめい / 池新
○バレンタインデー、もうすぐ春が / 池新


○わらをたばねたたわしでは(感) / 池新
 【1】わらをたばねたたわしでは、なかなかたるのすみっこがうまくあらえません。ほそいぼうのさきでほじくっては、またわらでこすって、水をながすのです。手はまっかにはれあがって、かじかむし、なかなかうまくいきません。
 【2】(なにか、もうすこしいいものは、ないかな。)
 正左衛門しょうざえもんは、たるあらいをするたびに、かんがえました。あるとき、あらなわを、なん本もみじかくきりそろえて、たばねてみました。しかし、あまりうまくいきませんでした。【3】わらくずが、やけにこまかくたくさんでます。
 「たばねただけではだめだ。なにかでしっかりしばって、くずれないようにしなければ。」
 そして、かんがえたのは、垣根の竹をしばってある、シュロなわでした。【4】正左衛門しょうざえもんは、たばねたわらを、シュロなわで、ぐるぐるまきに、かたくしばりつけました。あらなわのたばは、くずれなくなりました。
 (そうだ、シュロは、こんなにつよいのだ。【5】なにも、たわしは、わらでなければならないことは、ないはずだ。シュロをたばねてみてはどうだろう。そうすれば、わらくずもつかないじゃないか。)
 正左衛門しょうざえもんは、さっそく、シュロばかりのたわしを、つくってみました。【6】二つ三つつくって、なかまの小僧さんにも、つかってもらいました。
 「こりゃ、なかなかいいたわしだ。わらくずがくっつかなくて、らくちんだよ。だが、どうもすこしこしがよわいな。たるのつぎめや、すみっこがうまくいかないや。」
 【7】ともだちがいいました。そこでこんどは、シュロを針金でしばって、シュロのさきをブラシのようにみじかくしました。この針金でしばるしばり方をくふうするには、ずいぶん時間がかかりました。【8】そして、さいごにしあげたのは、二本の針金のあいだに、みじかいシュロの毛をならべ、針金をぐるぐると、ねじったものでした。すると、まるでシュロの毛虫のようなものが、できました。
 「なんだいそれは。なにをつくってるんだい。」
 【9】なかまが見てわらいました。すると正左衛門しょうざえもんは、その毛虫の∵両はしをもって、二つにおりまげてつなぎました。
 「なーるほど。」
 みんな感心しました。
 【0】みごとにできました。わらくずはでないし、たるのすみずみまでブラシがきいて、たるあらいが、とてもらくになりました。正左衛門しょうざえもんは、そのかたちがカメににているので、かめのこだわしと名まえをつけて売りだしました。かめのこだわしは、日本だけでなく、アメリカ、中国やインドにもどんどん売れて、正左衛門しょうざえもんは大金持ちになりました。

 (今西祐行
 「子どもに聞かせるえらい人の話」(実業之日本社)