ひとこと(8月2週)
様々な一歩
アジサイの広場
吉見こと大2
 日本とアメリカの社会を比較すると日本は競争を好まない平均的で集団主義
的な『十人の一歩』の社会であり、一方のアメリカは競争を善とみなす実力主
義的な『一人の十歩』の社会だ。日本の『十人の一歩』は戦後の日本の経済成
長に重要な役割をはたしたが、現在の景気を見れば分かるように、それも限界
にきている。アメリカの『一人の十歩』は現在のアメリカの景気を見れば分か
るように成功しているように思えるがマイクロソフトのビルゲイツのような大
物が一人勝ちしているだけの話であり、一般の人たちの生活は必ずしも安定し
ているとは言えない。これらの点から理想な社会は『十人の一歩』でもなけれ
ば『一人の十歩』でもない。個人が自分の能力を最大限に発揮する『十人の十
歩』の社会が求められる。
 
  この『十人の十歩』の例として分かりやすいのが野球である。野球は、そ
のチームにおいて選手の能力が平均的でも、もしくは一人だけ極端に秀でてい
ても勝てるスポーツではない。選手個人の能力は最大に発揮できる、つまり『
自分の仕事を確実にする』こと勝利への近道になる。今年の横浜ベイスターズ
の破竹の勢いを見れば分かるように選手個人すべてが自分のポジションで、い
わゆる『いい仕事』をしている。これは野球だけに限らず様々な分野に当ては
まる。
 
  中国の小説に西遊記がある。唐の偉いお坊さんである三蔵法師が孫悟空、
猪八戒、沙悟浄とともに途中、多くの苦難を乗り越え仏典を求めにインドの天
竺まで旅をする話である。この旅は三蔵法師だけでは到底、天竺まで行けなか
ったし三蔵法師や孫悟空だけでも無理だっただろう。四人の知能、妖術、怪力
など個人の能力を最大限に活用することで天竺までの道のりを切り開いたので
ある。
 
  今日のような社会では『十人の十歩』のように個人が最大限に能力を発揮
できないのは事実だ。学歴や金銭の問題など様々な問題がある。しかし十人で
一歩しか進めない時代や一人だけで十歩も進んでしまう時代はこれからは必ず
衰退していく。一人が自分の能力を最大限に発揮し確実な一歩を踏む。その一
歩が十人分集まって十歩となる。千里の道も一歩から、という言葉がある。ど
んなに高い目標でも確実な一歩一歩があれば必ず乗り越えられる。この意気込
みが不況を吹き飛ばす一番の薬だと思う。